球団、ファン、チームメートへの思いを口にした時だった。「チームメートにお世話になった…皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」。黒田の声が途切れ、20秒以上も言葉に詰まった。普段は冷静な男が涙を流した。
グレーのスーツに身を包んでの“けじめ”の会談だった。30分間、鈴木球団本部長と話し合った後、松田オーナーに意思を伝えた。
「球団へメジャーに挑戦する意向を伝えた。“行ってみたい”ということをお願いした」。メジャーか広島残留か…。1カ月以上の熟考を重ねて、慣れ親しんだ広島から離れる決断した。
広島に11年間、在籍した。入団直後は決して満足できる成績を残したわけではない。年を重ねて成長した。05年に最多勝、06年に最優秀防御率のタイトルを獲得。今季も右ひじ手術直後のハンディを背負いながら12勝した。一方で10年連続Bクラスと、ほとんど優勝争いに絡めなかったという苦い思いもある。
「違った野球にチャレンジしてみたいというのが決断に至った経緯。年齢も32ですし、野球に対する気持ちを見つめ直したかった」。11年間、優勝に無縁だった。メジャー移籍を決断することで新たな夢を模索する。
チームメートへの筋も通した。29日にバッテリー会ゴルフに参加し、広島市内の自宅に戻った時に気持ちを固めた。代理人と球団側へ決断した旨の連絡を入れた後、バッテリー会の飲み会に集まった仲間に広島を去ることを告げた。
「バッテリー会でみんなに伝えた。思ったより激励してくれた。みんなに背中を押してもらい、それで吹っ切れた」。だれよりも先に、ともに戦ってきた選手やスタッフに自分の気持ちを伝えたかった。二次会、三次会まで仲間と酒を酌み交わし、語り明かした。
今後はメジャー球団を決める作業に入る。マリナーズ、ドジャース、ダイヤモンドバックスなどが好条件を提示している。「評価される投手になったのもカープのおかげ。日本でやるなら、ここのチームしかない」。異国の地に渡っても広島への愛情は変わらない。黒田はその思いをかみしめて新天地へ向かう。
[デイリースポーツ]
[ スポーツナビ 2007年12月1日 11:14 ]

